top of page

eスポーツ界に、新たな風を吹き込む!株式会社ePARA 加藤 大貴&盲目のeスポーツプレイヤー いぐぴー

近年コンピューターゲームを新たなスポーツの形として捉え話題となっている「e スポーツ」。


今回紹介するのは、そこに障がいを持つプレイヤーと共に、新たな活躍フィールドを創造することにチャレンジしている株式会社 ePARA 代表 加藤大貴さんです。

パラスポーツではなく「障がい×e スポーツ」

しかも「視覚障がい」の方がプレーしているチーム「Fortia」とは!?

「工夫次第で誰でも楽しめる」その魅力と共に、目指す未来についてお話を伺いました。

どのような企業なのか、一言で教えてください。


eスポーツを通じて障がいを持つ方の就労支援を行う企業です。



この企業をスタートさせたきっかけを教えてください。


私自身、もともとは障がいを持っている方や認知症の高齢者の方をサポートする「成年後見」という活動をしていました。その中で、障がい者を持つ方との接点が多くなってきたんです。そこで、彼らが社会的な接点を増やすためにはどうしたらいいか?と考えた時に出会ったのが eスポーツでした。


まだ新しい分野ですが、それにも関わらず人気があり、企業の方々も取り上げているというところに魅力を感じたんです。そこから接点を増やしたいと思い、この ePARA を立ち上げました。



通常のパラスポーツなどではなく、どうして e スポーツ分野を選んだのでしょうか?


コンピュータゲームは、工夫をすればどんな方でも気軽に楽しむことができるのだということを知ったことですね。通 常のスポーツだと、実際に装備や準備が色々と必要になりますが、ゲームであればちょっとした簡単な工夫でできるん ですよね。

実際に eスポーツのイベントを実施した際に、右半身麻痺の女性と視覚障害を持つ男性のご夫婦が参加されました。そのお二人は、互いにできることを通してゲームをプレーしていたんです。


目が見えなくても、体は動く、右半身が動かなくても目は見える。お互いできることで支え合って工夫してプレーできるというのはとても魅力的ですよね。 そういった経験もあって、eスポーツを継続してやっています。



もともとは裁判所の書記官を務めていらっしゃったとのことですが、そこからこちらの道に来るまで苦労はありま したか?


一番大変だったのは、家族に理解してもらうことです。


たとえば、外部の方々なら、「e スポーツってよくわからない」と不理解があっても、そこから活動することによって、応援者を増やしていくというのは想定していたので、それは苦労ではないと思っていました。 ですが、家族であれば簡単にはいかないわけです。私がやることが家族全員に関わってくることですので。でも、必死に説得して今では支えてもらっています。


外部の方々の理解者を増やすことはもちろん大事なのですが、それ以上に身内のファンを増やすということはすごく大事なことであるなと思いますね。



ゲームを通して、障がいについて知ってもらう機会を増やす中で、何か気づいたことはありますか。


お互い理解をしていくためには、障がいを持つ人・持たない人、どちらも「コミュニケーションする機会を作り出すということが大切」ということです。

eスポーツの第一回目のイベントを開催しようとした際に、バリアフリーな設備がある会場が見つからなかったことがあったんですね。車椅子ユーザーの方もいますから、多目的トイレがないといけないとか、車椅子が通れないといけないとか、そういうことを考えていたんです。


ですが、後から車椅子ユーザーの参加者に聞いてみたところ「別に多目的トイレがイベント会場にある必要は、開催にあたって絶対条件というわけではない。」と言われたんです。驚きました。


その方がおっしゃるには「外で誘導してくれる人がいれば別に困らないと思う。トイレといっても、その会場にある必 要はなく、付き添いの誰かがいれば駅やコンビニなどのトイレでも OK。」ということでした。


つまり、専用の設備がなくても「ではどうしようか?」を一緒に考えられるような環境や「誰かに声をかけていい」という雰囲気があれば、何らかの障がいを持っていたとしても困ることが少ないということなんです。


だからこそ「バリアフリー対応していないところでもイベントはやってほしい」という話も伺いました。 これらはすべてコミュニケーションから生まれたものです。もしこの会話をしていなかったら、最初のように「設備が 整っていないといけない」という前提のままで、活動が狭まってしまっていたと思います。そうなると、イベントの可能性もどんどん狭まってきてしまいますよね。


ですが、こうやって障がいを持つ方との接点があれば、「何を考えて動いたらいいの?」ということが分かってくるわけです。

ただしもちろん、それは障がいによってバラバラです。たとえば別の障がいを持つ方だとまた別の考えが出てきたりしていました。


そういった経験があったからこそ、ePARA では障がいを持つ方々となるべく多くの接点を持ち、そこで積極的に話を聞くような場を作っていきたいなと考えています。


そして同時に、参加してくれたみなさんが、僕たちのように何かしらの気づきを得てくれたら嬉しいと思っています。



障がいを持っていない方もゲームのイベントには参加されますか?


参加されますね。


私たちが目指したいのが「混じり合う世界」を目指しているので、あえてそういう障がいの有無関係なく、色んな人間が混じりあうような大会を開いています。


例を挙げるとすると「企業懇親戦」というものを過去にやりました。


これは参加する際、企業の中で最低 1人は障がい者手帳を持っている人がいることが参加条件という大会です。だから、参加する企業は社内で、障がいを持つ方も、そうではない方も積極的にコミュニケーションする場所が生まれるんです。


そうすることで社内からはじまり、大会を通して社外まで双方のコミュニケーションがどんどん生まれていく。そこで、お互い混じり合って、理解し合える場所になっていくという感じです。



この ePARA ですが、知ってもらう機会はどのように増やしているのでしょうか。


今回インタビューに参加いただいているいぐぴーさんのように、障がい当事者の方に SNS やメディアを通した広報活動ということはもちろん実施しています。


ですが、もっと増やしていくために、就労移行支援所さんへ「こういう活動をやっているのでぜひ参加してください」 というように呼びかけなども行なっています。



そうやって声かけをするとどのような反応が返ってきますか?


そうですね、びっくりされる方もいますし「私たちはそういった活動ではなくて、職を探しているのですが...」と言われることもあります。


でも、実際には この活動のプレイヤーとして活躍し、その体験を記事にしてメディアで発信したりすることで、実際に就職に繋がった りする機会もあるんです。そういうことをもっと知ってもらうためにより活動を強化していくことは、必要であると思っています。



プロのチームとして活躍していくことは考えていますか。


今後、考えています。


実際に、いぐぴーさん(後述)はタイの有名なプロ選手に指導を受けたりしています。 実は当チームにはバイリンガルやトリリンガルの方が多く在籍しているので、言語の壁も気にせず、ゲームのスキルアップのために皆さん尽力されているんです。


この言語のこともそうなのですが、障がいがあっても企画や記事を書くことなど自分ができることで、チームそのものやスキルアップに貢献されている方が多くいらっしゃいます。



そうやって障がいがあってもできることで社会やコミュニティに貢献できるということは、社会の中でも本当はも っと活躍できる可能性があるということですよね。


はい。それをもっと理解してもらう必要なあるなと強く感じます。

企業の人事の方や経営者の方に話してもなかなか当事者の方と接点がないので「採用を見送る」と言われたりもします。


そこで「だったら、一緒にちょっと話したりして、お互い交流してみませんか」というところから入ったりすると「こういう人がいるんだ」ということがわかって活躍できる場所が徐々に広がっていくのではないかと思います。



今後のビジョンを教えてください。


本業は障害者の就労支援ですが、企業の雇用だけに限らず、eスポーツに関する記事制作や動画制作、ランディングペ ージ制作を通して自分の好きなことを生かして働けるというところも広がっていくといいなと思っています。


そしてより混じりあうような社会、一緒にみんな働ける社会の実現ができればと思っています。



最後に、新しいことにチャレンジしたい 10 代・20 代の若者へ、メッセージをお願いします。


eスポーツをやっている方々は10〜20 代の方が多いです。


そこから、我々も常に学ばせてもらっていますし、熱い思いやエネルギーをもらっています。ですので「自分たちの特技や趣味を生かしてこれで天下を取るんだ!」ということがあれば、ぜひチャレンジしてみてほしいです。


昔は「ゲームなんて」というところが、今では活躍の場所がどんどん広がっています。ですので、これだ!と思ったことはゲームでもいいですし、他のことでも一度チャレンジしてみてそこから世界をどんどん広げていって欲しいと思います。

加藤さん、ありがとうございました!

また今回は特別ゲストとして、障害当事者プロジェクトチーム「Fortia」所属「ブラインド e スポーツ界のミューズ」こと、いぐぴーさんにもプレイヤーとしてのお話を伺いました!





イラスト:sui https://epara.jp/author/sui/



ゲーム歴はどのくらいになりますか?


もう物心つく前からプレーしていたので、だいたい 20年ぐらいになります。

プレーしてきたタイトルは20は超えているかとは思います。今は主に、Fortnight(フォートナイト)、鉄拳 7、ストリートファイター5といったところに挑戦しています。



いぐぴーさんは全盲とのことですが、普段のプレーはどのようにされているのでしょうか?


パソコンゲームの場合は、読み上げソフトをはじめとしてあらゆるツールを駆使して「このレベルまでできたらラッキー!」という気持ちで色々チャレンジしています。

ひたすら自分なりにいろんなことやってみて、これなら自分でもできるぞっていうのをひとつひとつ叩き込みながら慣れていく感じです。



今回チームに所属し、e スポーツのプレイヤーとしてチャレンジしてみようというきっかけはどのようなことだ ったのでしょうか。


もともと e スポーツっていう言葉が出てきた頃、それこそ流行り出した段階から「自分にもできそうなタイトルが出てきたらチャレンジしてみようかな?」という思いが漠然とありました。


eスポーツの大会の配信も見つけて視聴していて「こういうのだったら自分にもできるんじゃないか?」ということでチャレンジを始めていて今回のチーム発足というところに近づいていきました。

一番大きなポイントになったのが、去年の秋開催された「ePARA チャンピオンシップ」という大会です。 そこに出場させていただいて、自分としては「負けても全盲で大会に出ること自体初の試みだから楽しもう!」という感じでチャレンジしたんです。


すると、いまだに信じられないんですけど、初戦で勝ってしまって..!そういう体験を経て「見えてなくともゲームって楽しめるんだよっていう環境を整えていきたいね」という話が ePARAに参加していたメンバーの一部でありまして今チーム発足に至るという感じです。



ゲームをプレーする中で、感じたことはありますか?


視覚障がい以外は診断を受けているわけではないのですが、自分としては色々と敏感な部分があるのでどこかで何かトラブルなどがあって崩れてしまったらどうしようと不安になることはありました。


実際色々な方がいらっしゃいますし、今は基本的にはオンラインですので。


でも今は「とりあえずなんとかなる!」と思っています。だから、不安よりも、共通の話題で話せる仲間がどんどん増えていく楽しさの方が勝っていますね。


他の大会には出場されましたか?


GAMEクロスさんの「ゆうゆうクリスマス CUP」という大会に出ました。


自分は「どれだけできるのかな〜」というラフな気持ちでチャレンジしたのですが、まわりはガチの人ばかりでした(笑) でも、そういうこともあって印象にも残った大会ですし、楽しい体験でした。自分がやっているタイトルであっても、こんなに世界は広いんだ!こんなスタイルでやる人もいるんだ!という新たな発見もあって、面白かったですね。



eスポーツならではの魅力はどんなところでしょうか。


相手がいて戦う楽しさはもちろんのこと、リアルのスポーツとは違った感じで「この技の時は、相手はどう思っていたのだろうか?


それに対してこちらはどう動けばよかったのだろうか?」と頭で試行錯誤していくしていく楽しさですね。


分析能力が磨かれていきます。



見えない中で相手の動きなどはどのように認識されるのですか?


主に判断に利用するのは「音」です。

例えば、格闘ゲームなどで、相手と同じキャラクターを使うとします。ここだけ見ると「同じキャラクターを使っている」ということで双方同じことをしそうなイメージがありますよね。

でも実はそれぞれ攻撃のパターンなどが違うので掛け声のパターンが変わってくるんです。これは一例ですが、そうやって音の違いで判断をしています。

音だけなのですが、見えない分、実は細かいところまで考えています。



eスポーツは本当に障がいの有無は関係なく楽しめるんですね。


そうですね!

障がいがどうのこうのというよりも、ゲームを純粋に楽しむという観点から相手と話していく時に色ん なスタイルの違いを生で感じられるところが多いです。


それは e スポーツに限らずかもしれないですが、障がいの壁を超えてコントローラーを持って操作をしながらちゃんと話しあえるというひとつの場があるだけで、こんなに違うんだって思います。


リアルのスポーツだと、始める前か終わったあとぐらいでないとちゃんとお互いコミュニケーションをとる時間はないと思うんですけど、eスポーツだと常に音声チャットなどでコミュニケーションをとりながらプレーできるので、すご いなって思います。



こうやって、自分の世界よりも外側に出ていくためにはどういったことが必要になると思いますか?


やっぱり、前向きな気持ちだと思います。


eスポーツですと「せっかくやるならこの大会目指してみよう!」とかでもいいですし、せっかくこういう機会があるんだったらこの人にゲームの解説してもらえるように頑張ってみよう!みたいなちょっとした「目標」を見つけると一気に外に向かって動きやすくなるのではないかと思っています。



今後チームとして、そしていぐぴーさん個人として目指すところを教えてください。


今 Fortia は「ブラインド e スポーツ」ということで、主に視覚障がいの方対象ということでやっていますが最終的には障がいの種類やその有無というのは関係なく、本当にバリアフリーなチームにしたいです。

あとは障がい者の eスポーツチームとしては「視覚障がい者がいる」ということは日本初でありなおかつインパクト大だと思っているので、そこをうまく生かし続けながら活動できればと思います。 私個人としては、今のところはフォートナイト※1を極めたいと思っています。

今後は有名な大会に出てこういうチームもあるんだと存在を示していきたいと思います。



【スピーカープロフィール】

加藤 大貴 株式会社 ePARA 代表。元裁判所書記官。障がいを持つ方の就労支援を軸として、雇用以外の場での障がい当事者の活 躍の場を広げていくべく、そのきっかけとして e スポーツ事業に取り組む。独自の e スポーツイベントや大会をはじめとして、チームのサポートなども行う。ブラインド eスポーツチーム「Fortia」を筆頭にさらに活躍の場を拡大予定。

◆ePARA オフィシャルサイト:バリアフリー eスポーツに関するニュースサイト https://epara.jp/

ぐぴー 障害当事者プロジェクトチーム「Fortia」所属。全盲。通称「ブラインド e スポーツ界のミューズ」。 フォートナイト、鉄拳 7 などをメインとしてプレーしている。 ePARAではメディアライターとしても活動しており、今後は世界初となる「全盲のゲーム解説者」などその活動の幅をさらに広げていく。

◆関連 URL:全盲いぐぴー、鉄拳 7大会出場のその後〜洞窟を抜けた先はきっと絶景に違いないhttps://epara.jp/fortia-iguppy-210704/

◆Twitter:https://twitter.com/music_apollonia

【イラストレータープロフィール】 sui 広汎性発達障がいを生まれつき持つ。ePARA ではイラストレーターとしても活動中。 ◆https://epara.jp/author/sui/

bottom of page