「ボランティアは障がいを理解するためのコミュニケーションツール」視覚障がい者のボランティア参加実践報告会

12月16 日、赤坂にある日本財団ビルにて「視覚障害者のボランティア参加 実践報告会〜東京オリンピックとパラリンピックのその先に〜」が開催された。コロナ禍ということで、今回は全国からリモートでの参加も可能となりその参加者は300人近く。その中で弱視や聴覚に障がいがあっても視聴ができるよう、画面文字の大きさを50ポイント以上にする・手話翻訳を同時に行うなどの工夫もされており、バリアフリーな工夫がされていた。


今回の報告会は、大きく二つに分かれる。

第一部では日本財団ボランティアサポートセンター(通称ボラサポ)がそのノウハウを生かして過去に実施してきたボランティアや説明会の実践報告、第二部では東京2020大会のボランティアに参加予定の視覚障がい者、そのサポーターの方々との座談会が実施された。


視覚障がい者と大会ボランティア

まず「全盲あるいは弱視を持ち、周りがほぼ見えない状態のなかで、なぜボランティアとして参加する必要があるのか?」そのような疑問があるかもしれない。


その問いの答えは日本パラリンピック委員会委員⻑、日本初のパラリンピック殿堂入りを果たした河合純一委員⻑がビデオメッセージにて明らかにしてくれた。

河合純一さん (日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会委員⻑)



「ロンドン大会の時にゲームズメーカーと呼ばれるボランティアがいた。その中に障がいがある方々が含まれておりとても良い取り組みだと思った。だが、その中には視覚障がい者は含まれていない。だからこそ、視覚障がいを持つ方々が今回の東京2020大会に参加することで、のちの大会のレガシー(過去の遺産)になるのではないかと思った。それは社会も、障がいを持たない人も同じ。先日もまた線路に視覚障がい者が落下するという痛ましい事故があったが声をかけることが命を救うことにつながったかもしれない。ぜひ(両者ともに)いい学びを進めていただければと思う。One Team for One Dreams!」


つまり、ただ大きなイベントの体験としてのボランティアというよりも、「互いが理解する ための、コミュニケーションとしてのボランティア」というような意味が込められているよ うだ。それは、河合委員⻑の「One Team for One Dreams!」という言葉からも感じられる。


相互理解のコミュニケーションの場としてのボランティアでは、過去に実施してきたボランティア活動は実際にどのような状況だったのか。


第一部にて、日本財団ボランティアサポートセンター参与である二宮参与をファシリテーターに筑波大学非常勤講師の宮本さん、日本財団ボランティアサポートセンターの高橋さんからその実際の取り組みについて語っていただいた。


二宮雅也参与(文教大学人間科学部人間科学科准教授 兼 日本財団ボランティアサポートセンター参与)



左:宮本俊和さん(筑波大学非常勤講師/筑波大学理療科教員養成施設 前施設⻑) 右:高橋由香さん(日本財団ボランティアサポートセンター事業部プロジェクトコーディネーター)


宮本さん

「まず参加の前に参加者のセミナーを開催した。それはなるべく多くの人たちに参加してほしいという思いがあったから。しかし、前回の⻑野パラリンピックのときのように、鍼灸などの学校の教員が専門性を持って関わるということではなく、今回は一般のボラ ンティアとして参加するというように条件が異なってくる。また、学生や若い人たちに参加してほしいという思いもあり、まずは不安も明らかにするために事前セミナーを開催した。」


自分が障がいを持っていたとしたら...

見える人間と同じことをするというのは、まず疑問や不安がたくさん出てくるだろう。だからこそ、コミュニケーションの障壁となりやすいその不安をまず取り除くということは、目に障がいのない人と互いのコミュニケーションを揃えていくということで非常に必要性の高いことだと思われる。


そのセミナーを開催したのちには、実際のボランティアとしての取り組みが実施された。そのことについては高橋さんから話してくれた。

高橋さん

「ボラサポでは計5回、視覚障がいがある方ない方、計53名のボランティアの方々にパラフェス、パラ駅伝、パラスポーツパーク等で案内やパンフレット等配布で参加いただいた。 実施前には、こちらとしてはサポートの準備は万端と思っていた。しかし1回目を終えて参加者たちのうち5割から出てきたのは「良くなかった」という意見。そこで、より参加をしやすくするにはどうすればいいのか?を考え改良を重ねていった。」


事例としてまず挙げられるのが、空間把握のための事前説明会の工夫である。視覚障がいを持つ参加者たちは何よりもまず空間把握や会場の理解をしなくてはいけない。改良する前は、その説明会を視覚障がいの有無に関わらず全員一緒にしていた。しかし、会場の理解方法によっては障がいの有無によって理解のスピードに差が生まれてしまうため別途時間をとっていくことが必要であると感じ、個別対応も可能な形に改良したとのことである。

その他には、ボランティアの事前説明会を設けコミュニケーションや互いの理解の場を設けていったり休憩所に椅子だけでなく机も置くことで、白杖があっても過ごしやすい工夫をしていった。お弁当の位置なども把握できるようにもした。


また、参加者のビブスには「視覚障がい」というシールを貼ることで、有事の際にも対応しやすくした。これには「レッテルが貼られるのでは?」という懸念もあったが「まだ完全に環境が整っていない中では安全配慮としては必要な部分がある。」と宮本さんは話す。


このような取り組みを続けた結果「ボランティアに参加してよかった」という声は最終的には10割に達するまでになった。また、この取り組みをどうやったら一般化できるのか?ということでわかりやすいボランティアガイドも作成した。


トライアンドエラーを繰り返しながら工夫によって変化が生まれる。

それは障がいがある人・ない人というところだけではなく目が見えるもの同士のコミュニケーションも同様である。だからこそ「相手は視覚障がい者」「相手は視覚障がいのない人間」という情報で相手に接するというよりも、まずは「人対人」が前提でありそこからお互いが相手の立場に立ち、そこから少しずつ知ることが何よりも大切であると感じた。


次の第二部からは、石川県盲学校教諭の石田隆雄さん、筑波大学理療科教員養成施設1年の秋吉桃果さん、東京海上ビジネスサポート株式会社の吉谷美和さんが登壇し今後東京2020大会にボランティアとして参加する上でどのようなことが必要になってくるか?の座談会が行われた。

中モニター:石田隆雄さん(石川県立盲学校教諭。全盲。東京 2020 パラリンピックでは射撃の会場でボランティアとして活動予定。) 女性奥:秋吉桃果さん(筑波大学理療科教員養成施設1年。第一次硝子体過形成遺残による弱視。オリンピックスタジアムにてイベントサービスで活動予定。) 女性手前:吉谷美和さん(東京海上ビジネスサポート株式会社。晴眼者。知的障がいを持つ 方への指導員。同行援護従業者(視覚障がい者の外出の際などのサポーター)の資格保持者)


石田さんは石川県よりリモート参加。

今日は雪が降っており、足元の点字ブロックが把握しづらいと話していた。視覚障がいがなくとも雪の日は足元が滑って危険ではあるが、視覚障がいがある人間にとっては、もはや歩く先が閉ざされてしまうようなもの。 このようなちょっとした普段の生活の困り事もこのように「コミュニケーション」によって知ることができ、視野が広がっていく。


まずは過去にボランティアとして参加した感想を石田さんと秋吉さんから伺った。

石田さん(以下敬称略)

「パラスポーツパークと1年前に開催されたイベントにて参加した。そこではサポートがあれば障がいがあってもボランティアとして参加できるんだなぁと実感した。会場に入る前に会場の構造を把握できるところが助かった。また、こちらからサ ポートしてほしいことを伝えることによって相手はしっかりサポートができるのだと感じた。参加者同士、最初は互いのことが分からない。だからこそ、そういうところはこちらからサポートしてほしいところを伝える必要性があると感じた。」


秋吉さん(以下敬称略)

「私は2018年開催パラフェスのほうに参加させていただいた。それまでにもボランティアの経験があったので逆に「視覚障がいの人が参加をする」というスローガンのようなものがなければ参加はできないのか?と感じた。また参加することを通して自分自身がサポートしてほしいことは相手に伝えなくては分からないのだとも感じた。そこを伝えることで現場における「課題」が浮き彫りになり東京2020のときは障がいがある人も参加しやすくなるのだと感じた」


2人の共通点ははやり「相手に伝えて互いに理解をしてサポートをしやすくする環境を作る」ことである。当事者からこのような気づきが出るということは、日常の中でもサポー トできるようにもっとコミュニケーションの大切さを訴えていくべきではないかと感じる。



ボランティアサポートセンターが実施してきた工夫によって、どのような点がよくなったか

秋吉「以前は説明なども大勢でやっていたので個別にも対応していただけるようになっていったというのは安心感がある。」


二宮さん(以下敬称略)

「空間把握というものは視覚障がい者に説明する上で大切なポイントになる?」


秋吉「トイレはあちらとかそちらといわれても認識しづらいので不安がある。自分の方が案内する立場になってしまったときに自分がわからないと動けないので大事だなと思う。」


二宮「目が見える人間がボランティアで活動してみると、実際に障がいがある方に説明するときは、丁寧に説明することが大切であるというのもわかってくるのか」


秋吉「ボランティア内でそういう意識が定着するので参加自体意義あることではないかと思う」


同行援護従業者(視覚障がい者の外出補助を目的とした資格)を持つ吉谷さんは、石田さんのサポートをボランティアの際に経験。初めて共に活動した際のことを語っていただいた。


吉谷さん(以下敬称略)

「まずは緊張した。あっちとかこっちとかは相手は伝わらないので。緊張して過剰な動きが多かったと思う。でも、コミュニケーションをしていくうちに少しずつ打ち解けていった。」


二宮「石田さんはそんな吉谷さんに対して感じたことはあるか」


石田「最初は緊張が伝わってきたが、私がサポートしてほしいことを伝えたり吉谷さんのほうからこういうのはどうですか?とコミュニケーションをする中でお互いを知ることができた。東京2020大会当日においても障がいを持っている方持っていない方一緒のチームになっていくとは思うがお互いを知っていくことが大事だと思っている」


二宮「一緒に活動してみて広がった新しいイメージはあったか?」


吉谷「初めての体験の後は、後悔と反省が襲ってきた。そこから友人のすすめもあり、同行援護従業者の研修を受けた。当事者の気持ちもアイマスク等を通して体験したが、そこからどのように寄り添ってどのようにサポートすればいいのかというのも学び、視野が広がっていった。」



コロナ禍の社会でのサポートはどうすればいいのか?

石田「最近街中で声をかけられなくなった。飛沫がとぶということもあるので。以前はできていた店内の誘導も現在は安全の面から避けられる状態が起きていて困る。コロナ対策としてどのようにサポートしてもらうのか・するのかというのを原点から考えていく必要があるのではないかと思う。」


秋吉「アルコール消毒のボトルがどこにあるのかわからない。あるいはタイプも様々なので足踏みタイプだったのに手でやろうとしてしまったり出入り口が分けられているのがわからなかったり、検温があることに気づかなかったりということがある。まだコロナ禍の中での社会の構造は障がいがある人はどうなのか?というのは考えられていないかなと思っている。」


二宮「吉谷さんはサポートする方法を身につけた側として、今声をかけられないのも少し寂しい現象?」


吉谷「寂しい現象。サポートする側としても声もかけづらくなった。今ある手指消毒もボランティアする状況であれば対応ができると思うが、ただ街中となると難しいところもある のかなと思う。」


二宮「お互いが新しい日常としてお互いが歩み寄っていくことが大事?」


吉谷「そう思う」


二宮「お互いが安心したレベルの中でお互い考えた上でサポートしてもらう関係性というのが大事になるか?」


秋吉「人と人とのコミュニケーションというのが大事になると思っている。お互い安心してお互いサポートし合えるようになって行けばいいのではないかと思う。」


二宮「積極的に声をかけていくことが第一歩となる?」


石田「我々としてはそれがすごく助かるところ」


全国にはいろんな視覚障がい者がいる中で、先生という立場からボランティアの一歩を踏み出すためにはどうすればいいと考えているか


石田「まだ自分の障がいを受け止めきれない生徒が中にはいる。だからこそ授業や普段の生活の中で、自分への理解を深めることがまず大事だと思う。その段階ができてから、次に周りの人たちに伝える自己表現という能力が必要と思う。そこからコミュニケーションに広げていくのが大切なのではないか。」


二宮「自己表現とは具体的にどのようなものか?」


石田「どんなことが苦手でどんなことができるのかを伝えられること。見えないので、こういうところを手伝ってほしいなど、細かいことを伝えられること。それが自己表現だと思う。」


秋吉「私はボランティアを通じて自己表現を学んだ。いつも一緒の人なら自分をわかってくれるけれど、障がいを知らない人と活動するとなると自分からここまで説明する必要があるんだなと気づいた。伝えることでうまく活動ができた喜びがあった。だからぜひボラン ティアには参加してほしいなと思った。

二宮「東京2020ボランティア活動はまさに多様性と調和が広がる活動といえる。だからこそ、障がいのない人間も一歩を踏み出す必要があると思う」


吉谷「声をかけたときに断られてしまうこともあるけれど、それはそれと理解をして率先して声をかけることは大事だと思う」


質疑応答

Q.視覚に障がいがある方が困った際どのような仕草があるのか?

A.石田「うろうろしてしまう。特に道に迷っているときは特に。」


Q.声をかけるときにはどうすべき?

A.秋吉「大丈夫ですか?と聞かれると大丈夫です!と言ってしまうので何かお手伝いできることはありませんか?などとかけられると答えやすい。」


Q.サポートするとき過保護になりすぎそうで不安

A.秋吉「声をかけてもらえることで、もしできなかったときお願いがしやすくなる。一言そういうことがあると言い出しやすい。」

吉谷「まずは声をかける。声をかけることが第一歩になる。」


Q.ボランティアをやって嬉しかったことは? A 石田「視覚障がい者という立場になって⻑くなるが見えている世界ということに対して、新たに気づくことができたかなと感じる。」


Q.秋吉さんへ東京2020大会に参加を決めた理由は?

A.秋吉「最初は迷っていたがパラフェスのボランティア参加したときにもっと関わっていけたらいいなと思った。そこから参加することに決めた。」

今回参加した秋吉さんは「今回は少し緊張した。東京 2020 は少しコロナのこともあり不安も増えたけれど、ボランティアとして参加をするのであればコミュニケーションの場所として、障がいがない人から障がいがある人へ声をかけられるだとか、私たちも視覚障がいについて説明するスキルを身につけられるといいなと思っている。」と話していた。


また吉谷さんは「サポートする側として大切なのはやはり相手のことを知ること。実際に アイマスクをつけてやってみるとより障がいへの理解が深まると思う。」とサポートする側のコミュニケーションについて話してくれた。


パラリンピック開催が近づくにつれてバリアフリーや障がいへの理解というものが一見高まっているように思える。

だが、コロナ禍の話から実はまだそれはほんの一部なのかもしれないと感じた。

「障がい」というものも様々な種類・観点があり、意味が広すぎるからこそ曖昧になってしまうことでまだ「身近」とは言いづらいところがある。

また「困っている障がい者がいたら声をかけましょう」そう言われる今であるが、どうやればいいのか、何が困ることなのか、声をかけていいのか分からないという壁も存在している。それで障がいを持っている人としては「ちょっと冷たい社会だな」となってしまうこともあるのかもしれない。しかし、それを知る機会というのもなかなか無いもの。

だからこそ、この障がいの有無限らず参加できるボラサポのボランティアは、互いを知る場所として、また互いを理解場所としても非常に有効な機能を持つと感じた。

ただ奉仕としてのボランティアではなく、これからは「相互理解の場としてのボランティア」という変化適切に相手をサポートすることを知るためには必要な変化であるのではないだろうか。

そして最終的には「対障がいを持つ人」「対障がいがない人」という括りではなく「個性の違う対人間」という見方に変わっていくことでよりダイバーシティへの実現は近づくのではないか。

東京2020 オリンピック・パラリンピック、コロナにより開催を危ぶまれている今ではあるが、パラスポーツの普及はもちろんのこと、互いを理解する場所して、安全に開催されることを祈るばかりである。