
記念すべき第一回目は、大阪に本社を構える株式会社ウィファブリック代表取締役 福屋 剛さんです。
もともと約10年間、繊維商社に勤めていた福屋さん。
そこで見えてきた服の廃棄ロス 問題を解決すべく、ウィファブリックを設立しました。
環境に優しい独自ブランド「RDF」のプロデュースや、服が廃棄されてしまう前に本当に欲しい人に届けられるシステム「サスティナブルアウトレットモールSMASELL(スマセル)」を通して、衣服の廃棄ロス(生産された衣料が売れないまま廃棄されてしまうことにより生じる損失のこと)削減へ取り組んでいます。
今回は、そこに賭ける想いや将来のビジョンについて伺いました。

ウィファブリックはどんな会社でしょうか?ひとことで表現するなら?
ファッションの廃棄ロスをなくす取り組みを実施している会社です。
どうしてCSRなどではなく事業として「社会課題解決」をやっているのでしょうか?
事業の成⻑性の中にサスナビリティ(持続可能なこと)を入れないと、課題解決ができないと考えています。
僕自身、学生の時にボランティア活動をしていたのですが、そこでの活動でそれを痛切に感じたんです。そういう「事業の持続性」っていうものが環境にインパクトを与え続けるという考えがあり、事業としてやっています。
その時やっていたボランティアはどのようなものでしたか?
いわゆる、ホーム レスの方への食事の支給サービスですね。
ただ、その活動も僕自身、経済とか時間とかいろ んな制約があって、ずっとやっていけるかというとそうではなかったんです。その「制約」 の経験が今の「持続性」を大切にすることにつながっています。
何故ファッション業界に⻑年携われているのですか?
もともと好きだったからですね。
学生の時からアルバイトで販売とかバイヤーアシスタントをやっていました。
その時に「衣服の大量廃棄ロス問題」などを考えたことはありましたか?
その時は、 ほぼなかったですね。
そこから、おそらくどこかでその問題に対する「危機感」というか「自分がやらないと課題は解決されない」という気持ちが生まれたと思うのですが、どのタイミングで生まれましたか?
新卒で繊維商社で合計10年ぐらい働いていたんですが、そこの7〜8年目ぐらいのときですね。
それなりに仕事ができるようになったときに、自分で製品を作ったりもするのですが、売れ残った在庫はそのまま処分していたんです。
基本的には在庫リストにチェックをいれて、業者さんに渡して、処分をお願いするんですけど、それってどうなるかというと ......ゴミ処理場で分けられて最終的には廃棄、あるいは埋立されるんです。
それをやっている中で、衣服の大量廃棄ロスについて、具体的にイメージするようになってきました。
そこに、ちょうどその問題がテレビでも取り上げられていた時期で、実際社会においても「そう」なのかなと意識するようになっていったという感じです。
服の大量廃棄ロスを防ぐために、現在メイン事業でやっている「SMASELL(スマセル)」ですが、廃棄問題以外の課題解決に何か繋がったというのはありますか?
ユーザーで主婦層の方々が結構いるんです。
その方々の中には実は経済的保護とかを受けている方もいらっしゃって。
それで「SMASELL(スマセル)」を使って自分で手に入れた服を本当に欲しい方に売っていったりして、そこから経済的に自立するきっかけになったというケースがありました。
もともとそこは考えていたことではなかったんですが、結果としてそうなったという感じです。

そういった「環境とはまた別方向への効果の広がり」を今後生かしていく予定はありますか?
最終的には衣服が流通して使いたい人の手元に届いて廃棄が少しでも減ればいいな、という気持ちがあります。
ただ、そこへ至るまでのプロセスは色々な形もあるのかなとも思いますね。
それこそ、一つの実践例として現在コラボレーションしている大阪モード学園さんとかの学生さんにデッドストックとか古着をリメイクしてもらって、付加価値をつけて、再販してもらうというプロジェクトがあります。
届け方はどんな形でもあるとは思うんですけど、とにかく共感してくれて一緒に課題解決したいって思っている企業さんとか個人さんとはどんどんコラボして色々な形でアウトプットしていきたいですね。
福屋さんのように自ら具体的なアクションを起こしていく人はまだ多いとは言い難いとは思うのですが、それはどうしてだと思いますか?
挑戦するハードルが高いのかなと思います。
起業するとか事業を成⻑させるとかそういうこと自体に障壁を感じているというか。実際やってみるとそこまでないんだけど、できない!と思い込んでいるというところは多いのかなと思いますね。
では、今後社会に対しての個人でも企業でも独自の社会課題への取り組みや考え方がもっと促進されていくにはどのようなことが必要だと思いますか?
自分の既存概念の枠組み以外のことを知ることだと思います。
僕は、学生時代はバックパッカーをやっていたんです。
夏休みとかのまとまった休みにお金を貯めて60ヶ国ぐらいまわりました。その時に色々と考える時間があって、自分と向き合う時間があったんです。
ある意味非日常の中で、新しい文化の人たちと触れ合うことで自分が一回リセットされる、今の価値観を見つめ直す時間っていうのがありました。
その時間が「正しいとされていることが本当に正しいのか?世の中に正しいとされている情報がほんとうに正しいのか?」というように考えるきっかけになりました。
だから若い子なんかには言うなら旅をおすすめしますね。(今は時勢的に厳しいものはありますが ...)
ただ、時間があるときにいろんな人にコミュニケーションをとってみて、自分たちの当たり前というのがバイアスかかっているということをちゃんと認識してから社会に出るっていうのは重要かなと思っています。その中で自分の価値観とかは醸成されていくと思うので。
いろんな価値観を知って既存概念から出ると言う感じでしょうか?
そうですね。
そうやって一歩踏み出す、チャレンジをするというのが大事だとは思うのですが、実際何かやりたい!と考えている子たちは潜在的にはとても多いと思います。
福屋さんのようなチャレンジをしていくためには、社会の中でどんな機能があると良いと考えますか?
その機能は整ってきているのかなとは思いますね。
自分自身、大学とか専門学校で講 義することも増えているんですが、そういう「企業側から若者たちのところにやってくる」ということが昔とは違うなぁと思っています。
僕たちの時代ではそういう「情報が向こうか らやってくる」ことが少なかったので...。
だから雑誌とかで必死で探すしなかったんですね。
でも今は、そういう「情報を気軽に得る」機会は増えてきていて、圧倒的にいい環境にもなってきているのではないかと思います。
スマホも普及して情報もたくさん手に入るので。
だからこそ今は追い風だと思っているんです。そういう機会や情報を活用していけば、いくらでもチャンスはあるのではないかなと思います。
あとは、チャレンジしていくとしたら、それを個人が「どう生かしていくか?」ということ にかかってくるのかなと思います。
情報も自分自身が何をしたいのか?という軸がないと、 ただの情報取得だけで終わってしまって、アクションに繋がらなくなってしまうので、取得するものに対してその質が問われるのかなと感じます。
そして、若者たちだけではなくて、大人の側も変わらなくてはいけない時代になってきているのかなとも思いますね。

最後に「こういう社会を実現したい」という姿を教えてください。
衣服の廃棄ロス削減 はもちろんですが、世界規模でCO2削減に取り組み、地球温暖化を防いでいくことです。
僕らが着手している産業というのは、もともと供給過多の産業です。
毎年世界では200億着 以上の衣服が捨てられているといわれています。
しかも、全生産量の半分近くが一度も使わ れずに廃棄されているんです。
その背景の中で、できるだけそれを廃棄せずに欲しい人へ届けていきたいという想いがあります。 また、服の廃棄の先のにあることなんですけど、廃棄することによってどれぐらいのCO2が排出されているのかという問題があります。
弊社ではそれが廃棄されずに再流通した場合、地球に対してどれだけポジティブインパクトを与えるのかというのをイメージしてもらえるように、「SMASELL (スマセル)」のサイト内でも購入されたアイテムごとに、その削減量が表示される仕組みにしています。
つまり「SMASELL(スマセル)」 は購入することで社会貢献につながるというのが可視化されているんです。
ちなみに、2050年ぐらいまでに今の経済活動を今の大人たちが継続していった場合、今よりも世界の平均気温が2度上がるといわれています。
現状はというと、過去100年の間に0.85 度ぐらいしか上昇してないんですね。
でも、今起こっている変災とかウイルスとか、気候変動ってこの「0.85 度の気温の上昇」から引き起 こされていると言われています。
もしも、これから気温が2度上がった時には普通に人類が今と同じような生活は絶対送れないと言われていて、その上安心した生活はできないと考えられています。
それは僕も近い将来起こるのではないかと体感しています。
2050年に2度上昇をできる限り抑えるためにも、これから経済活動をしている人たちが事業の中に地球温暖化を抑制できるような取り組みをやっていかないと、完全に解決するのは難しいだろうなと感じていますね。
それは、どうしても「SMASELL(スマセル)」 だけでは足りないところがあるんです。
もっと世界規模でCO2を激減させていかないといけない。
全体の消費者も法人もすべて含めた抜本的な動きがないといけない。
だからこそ、今は大企業さんと組んだりすることで、前倒し前倒しで達成していけるようにしていこうとしています。
それから、まだまだ家庭ゴミの問題とかと含めて「ゴミが排出される」っていうのは変わっていないんです。
根本的な部分「そもそも出さないようにするにはどうしたらいいか?」を考えていかないといけないなと感じています。
福屋 剛
株式会社ウィファブリック代表取締役。
繊維商社に10年勤務した後、制作した服が大量に廃棄されていくことに対し疑問を感じ退社。
その後、株式会社ウィファブリックを設立。エシカルな独自ブランド「RDF」や、企業のアパレル在庫を本当に欲しい人に届けるサービスの、サスティナブルアウトレットモール「SMASELL」を通して衣服の廃棄 ロス削減や地球温暖化防止へ取り組む。
企業HP:https://www.wefabrik.jp SMASELL:https://www.smasell.jp