
今回は、機能不全家族で育ちながらも、その経験をエネルギーに変え、解決を目指す株式会社RASHISA 代表取締役 岡本 翔さんの紹介です。
CSR 活動ではなく、事業として児童虐待問題に取り組んでいるのは何故?
そして、これから児童虐待を防止していくにはどんなことが必要?
新たな分野のリーディングカンパニーの想いと、日本では希少なソーシャ ルアクションを紹介します。
■ 株式会社 RASHISA は、主にどのような事業をやっているのか教えて下さい。
まず、やっている事業は、BPO 領域(ビジネスプロセスアウトソーシング。外部へ業務委託すること)です。
企業さんから在宅ワークでできる案件をいただき、登録しているユーザーさんに仕事を提供するというような内容ですね。
サービス名は、「RASHISA ワークス」といいます。
■ この事業を立ち上げる前は、就職の経験はありましたか? の事業を立ち上げる前は、就職の経験はありましたか?
就職の経験はないです。大学時代に就職支援事業で起業をしました。その後、事業譲渡の経験を得て、虐待問題に向き合い始めました。高校時代に読んだ本をきっかけに大学時代は旅をしていて、その後から起業を始めたと言う感じです。
■ 起業する上で、不安はありましたか?あったとすれば、その不安はどのように乗り越えてきましたか?
不安はなかったですが、いろんな壁はありましたね。
壁が表れる度に、要所要所で専門家の力を借りながら乗り越えてきました。
例えばですが、ユ ーザーさんでメンタルにトラブルが起きた時に、自分たちでどうにかしよう、ではなくて、心の専門家にサポートいただく、というようにしています。
■ どうして、自分の力で児童虐待防止支援やサバイバー支援をするように なったのですか?
自分自身、機能不全家族(家庭内に不和や対立などが存在し、不安定な状態にある家族のこと)で育って、兄弟たちも同じような経験をしてきているんです。
それを見ていたので、どこかを頼るよりも、自分がどうにかしなきゃ、やらなきゃな、という使命感があって、今に至ります。

■ ユーザーや取引先の企業の方からはどのような反応がありますか?
ユーザーさんは 170 名ぐらいいて、そのうち 4 割ぐらいが機能不全の家庭で育ってきている方、もしくはその可能性がある方です。
その中の方で、自分は居場所がないとか家族と思える所がないと思っていたけれど、RASHISAワークスがはじめての家族ですって言ってくれたりすることがありますね。
企業さんに納品したものは、他の企業さんに比べてとてもいいと言ってもらえることがあって、リピートいただくことも増えてきました。
■ 一番尽力したことは?
今も尽力しているけれど、対虐待サバイバーの方の環境づくりです。
それはどういう環境かというと、辛い経験から心の後遺症がでてしまった時に、いかにメンタルをやられないか、というものです。
そのために、RASHISA ではユーザーさんに対して「カルテ」というものを作っているんです。
その 「カルテ」を通して体調を把握するようにしたり、定期的なコミュニケーションをとることでユーザーさんが安心安全に仕事ができるようにしています。
そして、それが他にはないサービスの強みにもなっていますね。
■ そういう安心して仕事ができる場があるといいですよね。
そうですね、実際にそう言ってもらっています。
■ 世の中の虐待などに対するサポートって、「子どもを保護する」と言うことに対してはしっかりとあると思うのですが、その先のことは少ないように思います。それは何故か考えたりすることはありますか?
おっしゃる通り、法律に則ったところのサポートはあります。
ただ、虐待を受 けたことによる心身の後遺症などには予算などがぜんぜん使われていなかったりしている現状も同時にあります。
そこがちゃんと問題視されていないことが、まだその先のサポートまでいかない原因かなと思いますね。
■ 虐待を本当の意味で防止したり、施設から出たときに当たり前の暮らしができるようにしていくためには、どういったことが必要になると思いますか?
施設を作るとか児童相談所の取り組みに力を入れるとかもあると思うんですけど、子育ての問題とかパートナーシップに関するところにもっと支援が あればいいかなと思います。
虐待って、障がいのように手帳があるわけでもなく、国の定義はあるけれど、明確なものがあるわけではないので、予算がつけづらいんですね。そこにもっと支援を入れていく必要はあるかなと思 います。
■ そこをまず解決するために事業をされている、と。
そうですね。
ゆくゆくはこういった活動自体が、新しい国の制度とかにつながるといいな思っています。
■ おそらく、中にはただ守られるだけではなくて、もっと自分の体験を発信したい!と思っている人たちはいると思うんです。
でも、社会の中の虐待経験者への「偏見」がそういうアクティブなものを阻止したり、社会の中で普通に 暮らしていく上での障がいになっていると感じます。誰に言われたわけでもないのに、どうしてその「偏見」は起こるのでしょうか?
情報の一部だけが切り取られて発信されていたり、当事者とのコミュニケーションがないことが、偏見をいつの間にか生んでいるのかなと思います。
だからこそ、よりネガティブな方向にいくのかなぁとも思いますね。
そこを、自社メデ ィアなどを通して発信することで変えていくことは必要だと思います。
僕たちも情報発信することをスタートしていますが、もっと当事者側の考えとか経験とか、そこを発信していくことが必要だと思っています。
■ 社会はまだマイナスイメージがついてまわるからこそ、声をあげても冷たい反応が返ってくる、というような感じがありますが、その部分に関しては どう乗り越えましたか?
僕自身としては、最初から機能不全家族で育ったことを話していた訳ではなくて、2019年に初めてそのことを SNSに載せたんです。
それまではほとんど誰にも言ったことがなくて。
それこそ、僕自身も「そういうことは言ってはいけない」とか「ネガティブ」なことだと思っていたし、やっぱり反応も怖かったので。
でも、自分自身がこの問題に向き合おう、この先数十年この問題に時間を 投資しようと決めた時は、覚悟が決まって、SNS に投稿しました。
こうやって言えたのは、自分の中で「この課題に対してちゃんと取り組もう」と腹をくくったことが大きいですね。
もちろん、自分自身心の後遺症もありましたが、それとちゃんと向き合って決めたってのがあります。
■ その覚悟を決められた理由ってありますか?
自分がこの仕事を始めようとしたときに、背中を押してくれたことが人がいたことが大きいですね。
■そうやって支えてくれる人、後押ししてくれる人に出会っていくためには何が必要でしょうか?
乗り越えていくってちょっと難しいと思うので、社会の器が広くなっていくことでしょうか。
僕がやっていることもそうですけど、そういうサポートが増えていければ、乗り越えていくきっかけが生まれるかなと思います。
■ そういった社会の器を広げていくためには、おそらくどんな環境で生まれたとしても個人個人がもっと自分事にしていくことも必要かなと思うんですが、そこではどういったことが必要だと感じますか?
多くの人は無関心であっても無関係ではないと思うんです。
そんな事実に向き合って目を向けることも必要であると思います。
我々がやろうとしている情報発信も児童虐待問題にもともと関心がある人だけではなく、ないひとにも興味をもってもらえるようにしていきたいです。
■ これからのビジョンを教えてください。
虐待サバイバーの働くことに関する課題解決
→生活することに関する課題解決
→児童虐待虐待を未然に防ぐという流れを作っていこうと考えています。
具体的に伝えると、今利用している人たちはなかなか正社員で働くことが虐待の後遺症などで難しい人たちが多いんですね。
だから、今はその人たちに在宅ワークという形で、社会との接点と収入を生んでいくことをやっています。それが、第一段階の「働くことに関する課題解決」ですね。
その次の段階としては、フルタイムで活動できる環境を作ったり、転職を支 援したり、家を借りたりするときの信用問題などを解決するスキームを作ろうと考えています。
それが生活に関する課題解決です。
それらが整ってはじめて、さらに子育ての問題とか、パートナーシップの問題だとか、虐待を未然に防ぐという状態を作っていこうとしています。
ある意味国というか、一種の経済圏を作っていこうとしているようなイメージ ですね。
■ 最後に若者やこれから虐待を乗り越えていきたい人へのメッセージをお願いします。
絶対諦めなければ、絶対夢は叶う!
様々な経験をしながらも、それらを糧に新たな未来を作っていく岡崎さん。
一言に込められた強いメッセージは、彼が今まで多くの壁を乗り越えてきたことが分かるエネルギーを感じられます。
岡本さん、ありがとうございました。
岡本 翔 プロフィール 株式会社 RASHISA 代表取締役。大学生のころに起業し、就職支援などの サービスを実施。その後、サービスは一旦売却したのち「本当にやりたいことをやる」という想いのもと、自身や兄弟たちの機能不全家族での経験をもとに、虐待問題に本気で取り組むことを決意。そして、元の法人である株式会社RASHISAで事業を再スタート。 20代中間の若いスタッフたちとおよそ170名の登録スタッフたちと共に将来のビジョンを叶えるために奮闘中!
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