女性も男性もそれぞれの「個性」で輝ける社会へ。株式会社SHeStands 佐藤 圭子

男女雇用機会均等法が 1986 年に施行されて35年。


しかし、未だこの国は「ジェンダーギャップ(世界男女格差指数)」において156ヵ国中なんと120位という順位にあります。 今回は、そのジェンダーギャップを自身の子育てと仕事を通して知り、そこから解消へと導くため尽力している株式会社 SHeStands 代表 佐藤 圭子さんに、日本におけるジェンダーギャップの課題や、自身が目指す「ジェンダーギャップ解消のあり方」についてお話を伺いました。



SHeStands はどのような企業でしょうか?


日本のジェンダーギャップ、男女格差というのを解消していくソーシャルビジネスです。大きな目的としては、日本国内のジェンダー平等を達成するために立ち上がった会社になります。


起業したきっかけを教えてください。


子どもを産み、がらりと生活が変わった中でジェンダーギャップというものに気づいたことがきっかけですね。


ワーキングマザーとして会社復帰するまでは、日本のジェンダーギャップに疑問を持っていませんでした。男性優位な社会の中で、仕事は懸命にやり、自分さえ頑張ればというところにおいては、特に不満もありませんでした。


ですので、その中で仕事を通して自分の存在意義を見出そうとしていました。 しかし変化が生まれたのは出産後です。ワーキングマザーとして職場復帰した時、自分の努力や頑張りではどうにもならない、日本の男女格差、ジェンダーギャップという環境が立ちはだかっていました。


そこで、壁にぶつかり、子どもを産み母親になった時点で私の「個」としての人生を捨てちゃったんだってぐらい行き詰まってしまったんです。


産後3ヶ月で職場復帰し、そんな低空飛行状態状態の中でも力を振り絞り育児も仕事も毎日120%でやっていました。でもやはり、感覚的にはどれも10%ぐらいしかできていない感じでずっと空回りをしていましたね。

そんな中、日本は世界のジェンダーギャップランキングで、当時かなり下位にいるのを知ったんです。


そこで、日本の状況、おかしくないか?


女性が社会で活躍しにくいのも当たり前。ということに気づいたんです。


女性は子ども産んだ時点で人生を諦めなきゃいけないのかな?と思いつつ、一方で仕事も育児もぜんぜん上手くできない自分も責めていましたが、ジェンダーギャップという客観的な事実を知り、救いとなりました。


そこから、他国の状況にも目が行くようになり、グローバルで活躍している女性や、そうような女性がおかれている環境を徐々に学び、改めて日本の女性たちがどんな環境におかれているのかも知っていきました。


一時期海外にもいらっしゃったそうですが、子どもが生まれたときには日本にいらっしゃったのでしょうか?


そうですね。小学生のころは海外で育ち、帰国後も海外の学校に近い環境で学んでいましたが、社会人になってからは日本のしきたりの中にいました。当時もワーキングマザー自体がまだ少ない会社で、忙しなく働いており、業務以外の事に関してグローバル視点で外の世界に目を向けることがなくなっていました。


そういった経験を経てから事業をスタートされたということですが、起業するまでの期間はどれぐらいかかりましたか?


実はほとんど期間はないんです。1年半前まではその企業でマーケティングをやっていました。


他国の状況に目が行き学んでいく中で、ニューヨークにある女性就労支援のNPO法人のことを知り、理念や活動に感銘を受け、アポ無しで渡米し飛び込みました。


そしてその団体のCEOに直接アプローチし、運営やノウハウを聞く機会をいただきました。

その経験と気づきから、日本のジェンダーギャップ解消の一助となる道へと真剣に進むことを決意し帰国していました。


そして気づけば半年も経たない内に会社を辞め、すぐに会社を設立していましたね。もともと「これ!」と思ったら動けるタイプで、会社は当時繁忙期でしたがいける!と思ったので飛び込みました。


その行動力ってどこから湧いてくるのでしょうか?


直感ですね。 当時はがむしゃらに頑張ってもうまくいかなくて、アイデンティティクライシス※1に陥っていました。自分が何者で、どこに向かいたいのかさえ見失ったままずっと暗闇の中を走っていました。でもそのNPOを知ったときに、一縷の光が見えて「これだ”!」と考える間もなく動いていたんです。 ※1 アイデンティティクライシス:自分が社会においての存在意義などがわからなくなり、心理的な危機的状況に陥ること


特に力を入れたいものはありますか。


今は、2 つの大きな柱で事業を展開しています。


1つは個人向けの女性キャリアコンサルティング事業。


2つ目は企業向けのダイバーシティ・エクイティ・インクルー ジョン(多様性・公平性・包括性)推進を図る研修プログラムを提供する事業。両方ともすごく大事だと思っています。だから両方バランスよく回しながらジェンダーギャップ解消に向け取り組んでいます。ゆくゆくは女性就労支援のNPOも立ち上げたく、SHeStands の事業で得た資金をNPOへ還元し、サステイナブル に貢献できる仕組みを作っていきたいと考えています。


日本ってワールドギビングインデックス(世界寄付指数)という「寄付精神」や「与える精神」の順位も 126カ国中107位で低いんです。


社会に貢献するという考え方が他国に比べ極めて低く、NPOだと寄付金が募りにくいなどの課題や、自由に収益化できるものを作っておきたいなども考え、まずは SHeStands を立ち上げました。

ですから、今は この 2 つの事業で SHeStands の基盤を整えることしっかりとやっていきたいです。


ジェンダーギャップですが、日本と海外では、どのような違いがあると感じますか?


日本は変化に対する柔軟性に欠け腰が重いと感じます。やらざるを得ないからやっている、というように感じます。


また、そういうところにおける意思決定の場にいる人たちも、年配の男性ばかりでチームが構成され、まだまだ多様性 に欠けてしまっている状況ですね。


当事者意識のある弱い立場の者も意思決定の場にいて、初めて本当の意味で「男女格差」の解消にも繋がると思います。意思決定の場での多様性の欠如と、日本人は真面目で責任感の強い方も多いので、「ジェンダーギャップ」解消に向けてもなかなか身軽に動けというところがあるように思います。


一方、海外はどんどん変化していっていますね。

ジェンダーギャップの「政治」分野だけでみていくと、北欧も4〜50年前までは、国家議員の女性比率は今の日本と変わらず10%程度でしたが30年弱で40%ほどに上げています。


一方4〜50年前の日本は2〜3%で、未だに10%未満と、ジェンダー平等に取り組む他国に取り残されている状況です。ただ、これからは日本も変わらざるを得ないと思うんですね。


例えば、経済におけるグローバルな流れが遅れながら日本にやってきています。


ESG投資といって、環境や社会やガ バナンスに配慮しているかといった会社としてのあり方が評価され始めています。ですから「ダイバーシティへの取り組み」も投資の判断として重視されるようになっています。


また、消費者も企業側が社会に対してどういう姿勢を示しているかといった点で、モノやサービスを購入するようになってきています。 こういった時代の変化もあり、日本もこれからは「ジェンダーギャップ」だけに限らず、様々な変化に対して、恐れず柔軟かつ主体的に取り組まないといけなくなってくると思います。



ジェンダーギャップは男女雇用均等法などでも⻑年言われているにもかかわらず、なぜ自発的に変化することができないのでしょうか。


それは、男性が強い社会において、二つあると思います。


まずは労働環境の問題。日本は性別役割分担がベースとなる⻑時間労働を前提とした働き方を求められてしまうシステムで成り立っています。日本人男性が有償労働に費やす時間は世界の中でも圧倒的に⻑く、仕事へ⻑くの時間をコミットすることが求められます。


そんな中、男性本人が家族時間を増やし、育児・家事をしたいと思っていても、有償労働に費やせる時間は限られ、仕事でも疲れてしまい余裕がないのだと思います。女性もその反面、無償労働に費やす時間 が世界の中でも圧倒的に⻑く、男性並みに働くことことが出来る恵まれた環境に置かれた一部の女性しか、能力ややる気の問題以前に社会では活躍はしにくいです。


もう一つは、同調圧力というか「こうあるべきが強い文化」であることです。この国は「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」というものがすごくありますよね。男性は泣いてはいけないとか、稼ぐべきとか。女性であれば家事をやるべきとか。そういった無意識バイアスによる「こうあるべき」に苦しめられているのではないかと思います。


男性だって本当は弱音を吐きたい部分もあるだろうし、女性だって家事がものすごく負担であるだろうけど、それらの側面もあって「自発的になんでジェンダーギャップが解決できないの!?って言われても環境が許してくれないですよね。


究極は、ジェンダー関係なく異なる相手の立場にたって思いやるところから、自発的な良い変化が生まれていくと思うのですが、今の日本は誰もが余裕を持てなくなってしまっていますよね。


男女どちらかに何かしらの負担をさせるのではなくて、どちらも持つ、ことが大事なんでしょうね。


そうですね。両方楽になるのが大事だと思います。


「女性活躍」や「ジェンダー平等」というと、男性批判や男性を追いやるような攻撃的なスタンスに捉えられてしまうこともありますが、そうではなく、男女ともに楽になることだと思っています。


ジェンダーというと枠組みを取り外し、人としてみんなが楽しく輝けること。社会の負担や生きにくさを解決する策を みんなで考え取り組んでいきたいですね。


そこがまだ分かれてところがあるから、当事者の主張とそうではない人が対立してしまうんでしょうね。


そうですね。これは理想論ですが、いつか人をジェンダーという枠組みやラベルで見るのではなくて、性質で見る世の中になってほしいなと思いますね。


生まれてきた身体や環境で人を見分けるのではなくて、1人の性質ですね。


身体は男性だけど女性性が強いよね、とか、その逆とか。そういった「性質」でユニークなひとりひとりの存在を捉えていく世の中になっていって欲しいですね。


男性も女性的な部分が多い方もいますよね。家事をやっているほうが向いているであるとか。


そうですね。これからはこうあるべきとか、同調圧力、みんな一緒でないといけないとか、そういうものがなくなってくると良いのかなと思いますね。


これから NPO にもチャレンジされるとのことですが、将来のビジョンをより具体的に教えていただけますか。


最終的には、日本がジェンダー問わず誰もが制限なくて自分のポテンシャルを発揮できて自由に生きがいを感じながら 生きていける世界を目指しています。


そのための一助となれるよう、SHeStands とNPOの両輪のサイクルでサスティナブルに社会貢献をしていきたいです。


それから、フィランソロピスト(博愛主義者)という言葉が日本で普及し、寄付やボランティアなどの与える事が日本でももっと身近で当たり前となってほしいです。誰もが気軽にボランティアや寄付ができる世の中にしたいですね。 私たちが活動をしていく中で、そういったアクションが当たり前となるような文化も醸成していきたいですね。


そんな与え合うことが当たり前な文化の中で、男女問わずニコニコしているような日本にしていきたいなと思っています。


では最後に、新しいことにチャレンジしたいと考えている若者たちへ向けて、メッセージをお願いします!


何かをやろうとする時、同調圧力や、こうあるべきという考えの押し付けなど、良くも悪くも色々な意見が周りから飛んできます。でも結局は自分の中にしか真実はありません。


だからこそ、外の評価や意見は気にする必要なく、自分の中でこれだと思えたら、とにかくやってみてください。そうすると必ず次へとつながります。それが思うような結果でなかったとしても、その一歩が学びとなり、想像もしていなかった次の道を切り開いてくれます。


なので、周りがなんと言おうと、自分の中でこれだ!と心から思えるものがあるのであれば是非やってみてください。必ず次へと繋がっていきます。


【スピーカープロフィール】 佐藤 圭子 株式会社 SHeStands 代表取締役。国家資格キャリアコンサルタント。 自身が子育てと仕事の中で悩み、苦悩したことをきっかけに、日本のジェンダーギャップに気づき、日本の環境をより よくしたいという思いが芽生える。同タイミングで、NYC の女性の就職支援をするNPO法人に深く共感し渡米。 そこで得たさらなる出会いや気づきをきっかけに、自身でも行動を起こすことを決意し SHeStands を設立。現在は個人向けキャリアコンサルタティングや、企業向けDEIプログラムやセミナーを通して、女性の活躍推進のサポートを実施している。

SHeStands HP:https://shestands.co.jp/

SHeStands Instagram:https://www.instagram.com/shestands.jp/