top of page

「誰でも」履きこなせるオーダーメイドパンプスを実現!株式会社crossDs japan 諏訪部 梓

パンプスは女性のもの、紐ぐつは男性のもの。

そういった靴の固定概念を 3D Tech の力で変えていく!

自由に靴形を作れる技術を生かし、多様性のある生き方を実現するために、株式会社crossDsjapan が 5月よりLGBT キャンペーンを打ち出しました。


男性社員が自分専用パンプスを持ち、実際に着用して過ごすこともある、とことんユーザーの気持ちに寄り添った企業の考えるビジョンとは? 

今回のキャンペーンと合わせて代表の諏訪部さんにお話を伺いました。


御社はどんな企業でしょうか。

お客様の足を 3D 計測して、靴形から作るオーダーメイドの靴屋さんです。

靴作りを何十年も経験しているメンバーと共に事業をやっています。

実際に制作された木型と、靴のコレクション



もともと諏訪部さんは靴業界の方で、この事業をスタートされたのでしょうか。


いえ、もとは別の業界の人間でした。 学生時代はロボット工学を勉強していましたし、社会人になってからは10年ITコンサルティングの仕事をやっていました。

では、どうして靴の仕事を始めたのかというと、ひとつひとつ違うものを作ることがインダストリー4.0※1 として産業界で盛り上がってきたことがあり、オーダーメイドにおける課題を今まで自分がやってきたことを生かして解決できるなと感じたからです。


※1 インダストリー4.0:製造業において、自動化・データ化・コンピュータ化により工場の高度化を目指す昨今の技術コンセプトの名称のこと。

かつてロボコン(ロボットコンテスト)に夢中だった諏訪部少年(右)



私がITの仕事をしていた時にちょうど、IoT やインダストリー4.0など、ひとつひとつ違うものを大量に作るというコンセプトが世の中で盛り上がっていました。


その中で 3D プリンターの特許がきれたんです。ひとつひとつ違うものを作るのが得意な3Dプリンタ、それが突然安く簡単に手に入るという流れが生まれ、一品一様なものを作ることが現実的になってきたんです。そのなかで「オーダーメイド」というひとりひとり違うものを提供することに価値を感じました。


オーダーメイドは世の中に色々ありますが、その中でも女性のパンプス(ハイヒール)というのはなかなか足に合わなくて悩んでいることが多いということを知ったんです。もちろん、元々オーダーメイドシューズという製品やサービス は存在していましたが、とにかく高額で誰でも購入することは難しい状態でした。

そこで、3D プリンターを使って、靴の木型※2 を作れると安くできるのでは?と考えスタートしたのがきっかけになります。


※2 木型:靴型とも呼ばれる、革や布を木型にかぶせて形を整え靴の形に仕上げるのに使う靴作りの心臓部。昔は入手や加工しやすい木で作られていたが、近年は湿度により狂いが発生せず何度も使えるプラスチック製になって業界の慣例で今でも木型と呼んでいる。


3Dプリンター。これでひとつずつ木型を制作していく。



制作する中での苦労はありましたか?


はい。技術が発展して、靴の木型を簡単に作れそうなイメージはありますが、実際やってみると厳密にはそうではなかったんです。


靴は作るときにひっぱったりと色々と木型に力がかかります。ですが、表面の革を固定するために、釘が刺さらないといけない必要性もあります。引っ張って壊れるのも NG、そして釘が刺さらないのも NG。


つまり「丈夫なのに、釘が刺さる」というこの2つの相反する要素を木型に取り入れなくてはいけなかったんです。ここでまず苦戦しました。


そこで色々と試行錯誤して3Dプリントの技術開発をしました。


木型をひとりひとり 3D で作る技術についてもちゃんと足に合い、なおかつ窮屈ではない、ということを達成できるように開発を進め、商品としてリリースできるようになるには時間がかかりましたね。

ひとつひとつ職人による丁寧な手作業で靴の形が出来上がっていく。



諏訪部さんは男性ですが、実際女性の靴を扱う中で大変なこともあったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。


そうですね。男性なので、女性がパンプスのどういったところに問題を感じているのか、というところは分かりませんでした。


そこで、よりパンプスについて理解し改善するために、自分は男性ですが、7cmヒールのパンプスを日常的に履くことをやっています。

まずは自分で本質的に分からなければ、本当に快適なものは作れないないと考えているので。

ちなみに当社社員は全員男性ですが、自分のパンプスを持っています。



自社で制作したパンプスを履く諏訪部さん。エゾジカの皮に染色したデザインがアクセントとなりカジュアルな服装も華やかに。



今回のキャンペーンですが、どういったことがきっかけで今の時期に実施することになったのでしょうか。


実は3月末にとある TV 番組にて1分ぐらい「男性社員がパンプスを履いている不思議な会社」ということで当社が紹介されたんです。

そのあとすぐに、男性の方から「自分のパンプスを作りたい」というお問い合わせがありました。


そこで「ヒールの あるパンプスは女性だけではなく、男性でも履きたいという方がいらっしゃるんだ」ということに気付かされたんです。そこからすぐに実行に移りました。


大量生産されているパンプスには、縦のサイズや横幅のある、男性でも履けるパンプスって少ないですし、そういう窓口もないんですよね。


そこで、他にももしかしたらいらっしゃるのではないか?本当に必要とされている方に情報が届いていないのではないか?!ということで今回キャンペーンをやってみることにしました。


もともと LGBT の分野には興味があったのですか?


そうですね。今回のこともありより詳しく知るために、同じく靴を販売している百貨店さんにもお話を伺ったりしました。


そこで分かったのは「LGBT に関係する方では、人目が気になる時があり、落ち着いてお買い物がしたいという意見がある」ということでした。そういったところに関しては、私たちも「オーダーメイド」という特別な空間のなかで、性別などは関係なく、自由に好きなデザインを選び、制作し、完成した靴を履いて毎日を晴々とした気持ちで過ごすことができるお手伝いをできるのではないかなと思いました。


実際今回のキャンペーンを利用された方の様子はいかがでしたか。


作成したのが、赤系のマーブル模様のようなエゾジカの皮を使ったヒールと、同色系のボディのパンプスでした。


オリジナリティのあるデザインで、お客様がわくわくしながら嬉しそうに「やっぱり、これで」と選ばれていた姿が印象的でした。一対一で落ち着いて制作できることはもちろんですが、こうやってご本人が本当に欲しいデザインを自由に作れることもオーダーメイドの醍醐味だと思っています。


今回のようなケースを知る中で、それらを改善・解決していくためにはどのようなことが必要だと考えていますか?


私たちがやっているのは直接社会課題を大々的に解決するようなことではなく「靴をつくる」というシンプルなことです。


しかしキャンペーンを通して感じたことですが、社会をより良くしていくことに対しては、私たち自身が新しい道を見つけ、進んでいく必要性はあるのだなと思いました。そして同時に「3D プリンタで型を作って、世界に一つだけの靴をつくり、多くの人を幸せにしていく」という使命を改めて感じました。


直接お客様の声を聞きながら作っていくことができるので、これから靴を通して社会課題を解決することであったり、色々なバックグラウンドをお持 ちのみなさんのお手伝いができるようになりたいなと思っています。



それでは、これからのビジョンを教えてください。


当社の技術ですが、自分達だけが持っているだけでは社会も変わっていかないと思っています。ですので、外部の靴屋さんに当社の木型を提供するB2B事業を始めています。


足を3D計測してそのでデータをいただくと、木型をこちらから送るというような流れです。今後はこの技術を使った靴を全国の当社以外の靴屋さんでも提供できるようにしていきたいですね。



それでは最後に、新しいことにチャレンジしたいと考えている若者たちへ向けてメッセージをお願いします。

私自身の話をすると、好きなことを常にやってきました。

学生時代はロボット、そのあとは経営にも興味を持ち簿記2級も取ったりしました、そして ITコンサルタントを経て今靴の事業ということをやっています。


一見別のことに思えますが、これって、全部繋がっているんですよね。

こうやって好きなものや興味・関心を繋げていくと、自分が活躍できる場所が自然とできていくのかなと思います。


何がやりたいんだろう?って悩むよりも自分がちょっとでもいいから好きなことをやっていくことで、さらにやりたいことに辿り着くのかなと。靴作りとロボットは関係ないように思えますが、ロボットをやっていたおかげで、靴の木型を作る3Dプリンタの修理 や改造もできます。


なので「経験」というものに無駄なものはないのではないでしょうか。 失敗などももちろんあります。ですが、あきらめたら「失敗」になるだけで、諦めなければ成功への「プロセス」になります。

そして、その先に真の成功へ、辿り着くのではないかと思います。

【スピーカープロフィール】 諏訪部 梓 株式会社 crossDs japan 代表。 ITコンサルティングの仕事を10年続けたあとに、靴作りの世界へ。3D Tech の力でより足にフィットするオーダーメイドシューズを制作している。足に合わせた精巧な木型を作れる技術を生かし、様々な靴を世の中に生み出すことで、性別は関係なく好きな格好で毎日を豊かに過ごせる社会の実現を目指す。

企業 HP:https://www.hana-ayame.info


bottom of page