「ケア」と「フェア」で障がいを生かして働く企業を創造する!株式会社リクルートオフィスサポート 渡邊 千洋

障がいを持つ方の雇用を守り、そして促進していくために「身体障害者雇用促進法」が制定されて今年で 61年。


その間、精神障がいを持つ方の雇用促進や、差別禁止規定など様々な取り組みが盛り込まれ、企業におけるその認知も進んできましたが、まだまだ障がい者の雇用が進んでいるとは言い難い現状があります。ですが中には、独自の取り組みや考え方のもと、障がい者雇用に必要な環境改善に成功している企業も存在しています。


今回は、「在宅勤務」を通して地方の障がい者の就労の機会を拡大し、職場改善好事例集にも掲載された、株式会社リクルートオフィスサポートの代表取締役 渡邊 千洋さんにお話を伺いました。

株式会社リクルートオフィスサポートはどのような企業でしょうか。 株式会社リクルートの 100%出資の特例子会社※1です。


おもな事業は、リクルートの経理総務人事の事務代行です。 メンバーの約8割が、障がいを持ちながら働いています。 ※1特例子会社......障がい者雇用の安定や促進を目的として、親会社のもとに作られた会社のこと。



障がい者雇用に対しての、貴社ならではの取り組みはどのようなものでしょうか。


「ケア」と「フェア」の両方を大事にしています。 障がいに対して合理的な配慮はするなかで、それぞれの取り組みに対して自己ベストを目指してもらう。そして障がい の有無に関係なく、公正に評価をしていく。そういった、「ケア」と「フェア」の考え方は大きな特徴です。


フェアの実現のためにはサポートが必要だと思われますが、研修はどれぐらいの期間をかけるのでしょうか。


新卒の方は 4ヶ月、中途採用の方は 3ヶ月ですね。

弊社は中途採用でも事務職未経験の方が多いんです。ですので、PC 操作やコミュニケーションなど、丁寧にやっています。


また、同じ障がいであっても実は一人ひとり違います。ですので、研修期間にいくつかの部署で仕事を経験してもらい、その中で障がい特性や個々人の強みを生かせるところをうまく見つけて配属先を決定しています。


「あなたはこういう障がいを持っているから、ここしかできないよね」と決めつけるのではなく、一人ひとりのスキルに合わせて、配属先を決めているということですよね。


はい。他にも、上⻑と自分のキャリアについて話す機会を、少なくとも半年に 1回用意しています。

今後も会社のなか で活躍し成⻑し続けるためには「この研修をうまく使っていきましょうか」とか、「こういう異動も可能性として加えられるよね」といった会話をしながら進めています。



「障がいを持つ方がキャリアアップしていくための好事例集」に「在宅勤務での成功事例」として紹介されていますが、ポイントはどのようなところでしょうか。


ひとつは、職域(職業の範囲)を切り出し、業務として成立させている点だと思っています。


実際に他社でも在宅雇用を進めたいという 話はあるんです。ですが、躊躇してしまう。


ではその最大の理由はどうい うことかというと「 職域がうまく切り出せないから。」なんです。


まず、「どんな仕事をお願いしたらいいのか」 というところでつまづいているんですね。 弊社も、完全在宅勤務での雇用を始めた際は、業務の選定に悩みました。


フィジビリティスタディ※2でいろんな業務を経験してもらうなかで、在宅勤務でやれることが明確になってきたのです。そこで、いまある業務から切り出していきました。 ※2フィジビリスタディ......。実験的なこと。現在は、リクルートが運営しているサイト情報のチェック業務を担当してもらっています。


もうひとつは、ICT を活用し、コミュニケーションの量を確保している点です。

朝会夕会は WEB 会議システムを利用し、カメラオンで行っています。


また、朝会のあとは、在宅勤務者専用のポータルサイトから体調とその詳細を自己申告、夕会前は同じサイトに振り返りを記入してもらっています。業務中はカメラ は基本オフでですが、チャットでつながっています。チャットは雑談の書き込みもオッケーにしており、毎日すごい量 の書き込みがありますね。業務以外の繋がりを作っていくことは、在宅雇用におけるポイントになってくると思います。



今まで企業全体で取り組んでいく中で課題がまったくなかったということはなかったと思うのですが、生じた課題 などはどのように乗り越えていきましたか?

まず課題ですが、大きなものとしては 東京における採用活動が難しくなっている点ですね。


障がいを持っている方が一般企業に就職する時、


1. 一般企業の中の障がい者枠

2. 特例子会社

3. 一般企業

というように主に 3つの選択肢が あります。 その中で特例子会社というと、まだまだ福祉寄りのイメージがあるのが実態だと思っています。ですので意欲の高い方は敬遠してしまう。


弊社がチャレンジしようとしている「フェア」の部分は、特例子会社の中でも異質の取り組みなのだと思いますが、特例子会社の制度を利用した上で会社を運用しているので、ほかの1や3のケースに比べると採用難易度は高くなっています。


さらに東京は特例子会社も一般企業も一番集中しています。障がい者にとっては就労・就業機会が多いけれど、企業に とっては人材が取り合いになっている現実もあるんです。一方、地方で障がいをお持ちの方の就業率は低い。意欲はあるのに働けていないという方々も多く、そこには弊社の求める人物がいらっしゃる可能性があるのではないか? ということで、2016 年より地方における在宅勤務での採用をスタートし、課題解決に向かい始めたということがあります。



「障がい者雇用義務制度」という既存の枠組みについては、どう考えますか?


現時点においては、制度があったほうが障がい者はチャレンジしやすいと思っていますね。


私は弊社に着任する前までは、「特例子会社よりも一般就労にして、障がいがあったとしてもみんな一緒の環境で働けばいいのでは?」と思っていました。


でも、弊社のメンバーに話してみたら「いやいや何を言ってるんですか」と言われたんですね。


「今 、みんな障がいをオープンにして、それぞれが得意なことや 苦手なことをフォローし合いながらやっていっているからこそ、モチベーションが保てる。その上で仕事もちゃんとできるようになってきている。でも、そういう枠組みがなく障がいの有無もわからない状態に放り込まれたら、周りからの声や目線が怖くてパフォーマンスは発揮できないし、会社に行きたいと思えなくなるかもしれない。」と言っていたんです。 それを聞いて、「あぁ、なるほどな......」と思いました。


一般就労で働きたい・チャレンジしたいと思っている人もいれば、いやいやまだ障がい者枠でスタートして、力をつけていって、次のタイミングでもっと広い世界にチャレンジしたいと思っている人もいる。


だからこそ、「障害者雇用義務制度」は、今は必要なものなのかなと思っています。



障がい者雇用に関する課題 を解決するには、どこから、どういったことをアクションすれば良いと考えますか?


おそらく「これをやればすべて解決する」ということはなくて、ひとつずつしか物事はクリアにはならないと思っています。


そのためにまずは、何に取り組むのか、それはなぜなのか、というところを明確にしていくことが必要だとと思います。障がいを持っているといっても一人ひとり性格も特性も違いますし、同じ障がいでも得意な部分があれば苦手な部分もあるし、できることがあればできないこともあるわけです。


まずは「○○障がい」というようにひとくくりには考えない。


「こういう障がいをお持ちの方でこういう働き方を希 望している人にはどういう環境が必要なのか?」という風に、ひとつひとつ明確化することも大切だと思っています。


そのためには「ひとりでも多くの当事者に会って、ひとりでも多くの人の話を聞いて、それをクリアにしていくことが 大切なのではないか?」と思います。


弊社は、知的障がい、聴覚障がい、下肢障がいというところからスタートしていますが、現在就労している方々の障がいの幅が広がってきているのは、そういった細かなところからチャレンジしていった結果だと思っています。


それではこれからのビジョンを教えてください。


今期の会社としてのテーマが「リクルートオフィスサポートの未来を創造する」なんです。

「経営陣」ではなく、弊社ここで働いている一人ひとりに創造してほしいと思っています。 このテーマにしたのは、5年後10年後、この会社がこうあったらうれしいね、こういう会社になりたいね、仕事はこういう仕事をやっていたいね、こんな仲間とこういうことをしていたいね、社外からはこういう会社と思われたいね、といったところをみんなが考えて、ひとつひとつを着実に実行できる会社でありたいという想いがあるからです。


リクルートオフィスサポートは、従業員一人ひとりが財産で、彼ら彼女たちの日々の活動が企業価値をつくっているん です。だったら、ここで働いてる一人ひとりの方々が、こうありたいっていうことを自由に発想できて、自由に言い合えて、その中でおもしろそうなのは実際に会社として取り組んで、一つでもふたつでも実現できる、そんな会社にしていきたいなと思っています。



それでは最後に、新たなことや大きなことにチャレンジしたいと考えている若者へ向けてメッセージをお願いします!


では、最近私がよく話していることをお伝えします。


論語のなかに『これを知る者はこれを好む者に如かず』ということばがあります。


「好きな人にはかなわない」 ということです。

「○○が好きでチャレンジしている人は、圧倒的にコミットメント※3が強いし、最後までチャレンジしてやろうという、実現してやろう、という思いが強い。だから、絶対そういう人たちには叶わないのです。 ※3自分の行動を作っていく具体的な仕組みのこと


私自身も「これをやらなければならない」という義務感ではなくて「これにチャレンジしたい」とか「こうしたい んです」っていう「実現したい想い」を一つでも多く持って欲しいと思っています。そして、それを本気で思ったらそこにまずコミットメントしてみてやれることを全てやりきってほしい、とも思います。


おそらく、そういった方々が今社会で活躍している人材になっているんですよね。 もちろん、私もさっき話したような「みんながやりたい→実現したいことを自由に言えてちゃんと実現できる会社」になるように、全力を尽くしたいと考えています。


もちろん、諦めずに!


【スピーカープロフィール】 渡邊 千洋 株式会社リクルートオフィスサポート代表取締役。 「ケア」と「フェア」の考えのもと、それぞれが持つ個性や特性を活かした人材システムにより、約8割のスタッフが障がいを持ちながらも働き続けられる環境を実現。 2016 年より地方在住の障がい者に向けて「在宅勤務」を通した雇用も力を入れており、その取り組みは「精神障が い・発達障がいのある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(2018 年度職場改善好事例集)」に掲載され、優秀賞を受賞した。 障がいの有無に関係なく、一人ひとりがキャリアアップをしていける企業として、そして社会全体がそうなっていくために常にチャレンジを続けている。

企業 HP:https://www.recruit-os.co.jp